あなたはどっち

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▲Bebelplatz▲

写真はBebelplatz(ベーベル広場)。Humboldt-Universität zu Berlin(フンボルト大学)とはUnter den Linden(ウンター・デン・リンデン通り)を挟んですぐ南に位置します。広場の西にはHumboldt-Universität zu BerlinのJuristische Fakultät(法学部)が、東にはStaatsoper Unter den Linden(ベルリン州立歌劇場)があります。

1933年5月10日の夜、NSDAP(ナチス)のReichsminister für Volksaufklärung und Propaganda(国民啓蒙・宣伝大臣)で、後のNSDAP第2代総統であるJoseph Goebbels(ヨーゼフ・ゲッベルス)に率いられた約70000人の「学生」が、この広場(当時はOpernplatz/オペラ広場と呼ばれていた)で、NSDAPの意にそぐわないと見なされた書物約20000冊をこの場にて燃やしました。NSDAPによる焚書のうちで、一番有名なものです。映像を初めとした記録が残っており、教科書などで目にされた方も多いでしょう。

この広場の真ん中に、ポツンと下記のようなのぞき窓が設置されています。のぞき込むとそこには真っ白な立方体の空間の四方の壁に、これまた真っ白な空っぽの書棚が設置されています。

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▲Denkmal zur Erinnerung an die Bücherverbrennung▲

これはイスラエルの芸術家Micha Ullman(ミハ・ウルマン)によるインスタレーションで、「Bibliothek(図書館)」というタイトルが付いています。1994年-1995年にかけて設置されたものです。Denkmal zur Erinnerung an die Bücherverbrennung(焚書の記憶のための記念碑)とも呼ばれているようです。

5m四方のこの図書室と仮定された空間を、上からのぞき込むように窓は設置されています。のぞき込むと、空っぽの書棚。NSDAPによる焚書がここであったことを記憶している人は、すぐにこの書棚が空っぽである意味が分かるでしょう。この書棚は本来ここに収められるべきだった、しかし焚書によって失われてしまった20000冊の書籍のためにあります。

このインスタレーション、広い広場の真ん中に、本当にポツンとあります。近くには同じく地面に埋め込まれた、Heinrich Heine(ハインリッヒ・ハイネ)の下記の言葉と共にこの作品について記されている2枚の小さなプレート以外には、特に目立つようにはそこにインスタレーションが設置されていることを示すものはありません。

Das war ein Vorspiel nur. Dort wo man Bücher verbrennt, verbrennt man am Ende auch Menschen
それは序章に過ぎなかった。本が燃やされるところでは、最終的にまた人も燃やされるだろう。

Almansor 1821年

したがって、偶然そのインスタレーションに気がつく人は少ないです。また気がついたとしても、この土地であった歴史を知らなければ、それはただの白い空間にしか過ぎないと捉えられてしまうこともあるでしょう。それを見つけた人の反応は様々です。チラッとのぞいてさっと立ち去る人。じっと中をのぞき込み、何かを考えてそうな人。Ullmanの意図としては、当然それをみて焚書に思いを馳せて欲しいというのもあるのでしょうが、その意図を人々がインスタレーションを見て汲むことが出来ない場合があるのも、またUllmanは知っているのでしょう。彼の制作意図の1つに、政治的な意味合いはあったとしても、そこに煽動的な要素はみいだすことはできません。あくまでも、見る人に自由に捉えて欲しいと考えているのではないでしょうか。

このインスタレーション、ガラスに覆われているため、様々な顔を見せてくれます。天気が良ければ、ガラスに光が反射して中のものが見えにくかったりします。また、ガラスに周りの景色が映り混んで見えることもあります。夜なら、白い空間が暗闇に不思議な雰囲気で映えます。

私はのぞき込んだときに、自分の姿が見えました。まるでこの作品に、「お前は本を燃やすか?」、そう問われたようでした。

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