わかれにあたって

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▲Allgäuにて▲

明後日、友人Jがドイツでの半年間の留学生活を終えて祖国中国へと帰ります。昨日はその歓送会が彼主催のもとで開かれたので参加してきました。

半年前に出会った頃のJはまだドイツ語を習い始めたばかりで、自己紹介の時も半分以上は英語でという状態でした。しかし、昨日の彼はちゃんとしたドイツ語を操つる事が出来ていました。ホストとして参加者に気を配って場を和ませてくれたおかげでとても楽しく、すさんだ生活を送る今の自分にとっては、久々に心の安らぐ時間を過ごすことが出来ました。

そこに参加していた人はドイツをはじめ、スウェーデンやケニア、そして日本など国も人種も様々な人たちでした。彼の歓送会に集まった顔ぶれを見れば、彼の人柄がよく分かります。そして彼がこの半年間、どのような生活を送ってきたのかも分かります。

最初は言葉も不自由だったJですが、異国において安易に同郷の人を求めるのではなく、現状を活かし、そして人の輪を広げたようです。現に歓送会の出席者に、中国人は一人もいませんでした。

彼はもう中国人であって、中国人ではありません。恐らくこれから先、彼は中国以外のどこの国へいっても、その国に上手くとけ込みやっていくことが出来るでしょう。中国という人工的な区分に分けられたところではなく、地球が彼の住む場所なのです。

ドイツに来て以来、幸いなことにJの様な優れたバランス感覚を持った人に出会う機会に恵まれています。それはひとえにある団体おかげなのですが、この団体で出会う人はかなりの確率で、自分の人生において手本になるものを持った人々です。

皆何れも一際すぐれた専門能力を有しています。その能力を活かした仕事に就き、その仕事を通じて社会に貢献の出来る人たちです。高い職業意識と倫理を持っていることがすぐに分かります。しかしそれをひけらかすでもなく、自分の能力が必要とされたときにはさらっと何事でもなかったかのように力になることが出来ます。人間的魅力と社交性にも富み、自然にその人の周りには他の人々が集まってくる。そういう人たちです。

さて冒頭の写真ですが、これは以前友人の結婚式に出席した際に撮ったものです。結婚式はオーストリアやスイスとの国境に近い、Allgäu(アルゴイ)というドイツでも有数の酪農地帯にある小さな村で行なわれました。遠くにアルプスなどの山々が見え、あとは永遠と牧草地が続いているような場所です。その牧草地を縫うように走る道路は、ほとんど車も通らないようなところです。そんな場所のとあるところに、この二つの人形は置かれていました。かなり巨大です。高さは3mをゆうに超えます。

新郎と新婦の友人である酪農家が作成した、二人をイメージした人形です。冬に向けて準備された干し藁の塊を積み上げて作り上げたものです。これを作った方も先に取り上げた団体の方なのですが、彼は酪農で利用する技術を利用してこのわら人形を作ったのです。

この場所を通ったときは「誘拐された花嫁を、新婦が参加者と共に捜す」というドイツの結婚式でよくあるゲームを行なっているときで、参加者みんなでバスで移動していたときです。この人形が遠くに見え、だんだん近づいてきて、それが二人を表わした人形だと分かったとき、参加者みんなで爆笑しました。それと同時に私は感動しました。

この人形を作る技術は酪農には何ら関係がありません。しかし酪農で利用される技術ではないと、この藁の塊は作れません。制作者は自分の持っている技術を、その分野のなかだけではなく、少し違った面からも見ることが出来るため、このようなアイデアを実行することが出来たのです。

高い専門知識や技術は持っているものの、周りが見えない人もいます。しかしながら彼はちゃんとまわりが見えています。おそらく制作者の方は酪農の分野においても、こういったような視点で仕事が出来ているに違いありません。自分の持っている専門知識や技術に活かされるではなく、自分の意志でもって活かすことの出来る人なのです。そしてさらにそこへユーモアと、人を幸せに出来るちょっとした要素を加えて、社会に伝えることが出来るのです。

彼に限らずこの団体で知り合う人の多くが、こういった特徴を持っています。自分自身はまだ高度な専門知識を身につけることは出来ていません。しかしそういった知識を身につけることが出来たとき、そしてそれを活かした職業に就いたとき、自分の知識が社会に活かされているのか、そこにユーモアはあるのか、人々を幸せにしているのかなど、そういったことを常に考えられる人になりたいものです。そして出来るなら、そのときに地球上に生きる人間として、偏ったものの見方でものを捉えない、バランスの取れた人間でありたいものだと思っています。

Jはまだ大学3年生。これから専門知識と技術を身につけていくのですが、恐らく彼はこのようなバランスを持った地球人として、この団体で出会う人々のように活躍することでしょう。このわら人形を制作できるような、ユーモアと広い視野を持って。次に再会するときが楽しみです。

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