さいごのばんさん

image00275.jpg
▲Leonardo da Vinci, The Last Supper / L’ultima cena(1494-1497)▲
▲tempera on gesso, pitch and mastic, 880 x 460cm▲
▲Santa Maria delle Grazie▲
▲Milan, Italy▲

画像はLeonardo da Vinci(レオナルド・ダ・ヴィンチ)による壁画、L’ultima cena(最後の晩餐)です。Leonardoの作品の中では、Paris(パリ)のMusée du Louvre(ルーブル美術館)にあるLa Gioconda(モナ・リザ)と並んで、一般に最も知名度のあるものではないでしょうか。

実物のL’ultima cenaは、Milano(ミラノ)にあるChiesa di Santa Maria delle Grazie(サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会)の敷地内の食堂にあります。その教会と食堂、そしてL’ultima cenaを併せて、Chiesa e Convento Domenicano di Santa Maria delle Grazie con “L’Ultima Cena” di Leonardo da Vinci – Milano(レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院)という、恐ろしく長い名前でUNESCO(ユネスコ)の世界遺産に登録されています。

そのLeonardoのL’ultima cenaの画像が、先頃10月27日よりインターネットで公開されて話題を呼んでいます。

もちろん画像が公開されたぐらいでは、話題にならないのはお察しの通り。すでにLeonardoのL’ultima cenaに関する画像は、インターネット上に無数にありますから。例えばGoogleの画像検索で検索してみれば、容易にその画像を発見することが出来るでしょう。

それでは今回公開されたLeonardoのL’ultima cenaの画像、何が一体話題となっているのでしょうか。

答えはその公開された画像の総画素数の多さです。

画素数といえば、デジタル・カメラに関する広告などで目にされると思います。最近のデジタル・カメラの性能は、一昔前までは考えられなかったような域に達しています。普及型のコンパクト・デジタルカメラでも、最近では1000万画素オーバーのスペックを持ったものが登場しています。デジタル一眼レフ・カメラの世界では、CanonEOS-1Ds Mark IIIは2110万画素といったCMOSセンサーを備えています。このブログで利用している画像は、200万画素から400万画素程度で撮影されており、12万画素程度で掲載されています。従って1000万画素オーバーの世界など、私にはまだまだ想像もつかない世界です。

その想像のつかない世界のもっと先を行く世界で公開されたのが、今回話題となっているLeonardoのL’ultima cenaの画像です。

どれくらい先を行っているかというと、公開された画像の総画素数は実に16,118,035,591画素という、もう私などの想像もつかないところなのです。この数字、パッと見ただけでは、私はすぐに読めません。10,000,000画素でも十分大きな数字だというのに、この画像の画素数は、文字通り桁違いです。

公開したのは、HAL9000というイタリアの会社。名称がなんだか聞いたことあるような気がするのは、気のせいかどうかというのはさておいて、この会社のサイトでその画像をながめることが出来ます。

サイトは英語イタリア語、そしてなぜかしら日本語が用意されています。日本語の画像公開サイトのタイトルは「ここでは『最後の晩餐』をとりあげましょう」となっています。

ここでは予め用意されている専用のビューアーで、LeonardoのL’ultima cenaをながめることが出来ます。ビューアーでは拡大縮小などが出来ますが、この今回公開された画像のすごさを確かめるのには、拡大が適しています。ビューアーでどんどん拡大していくと、「いったいどこまで拡大出来んねん!」とつっこみを入れたくなるほど、拡大可能です。HAL9000によると、1平方mmまで拡大して見ることが出来るとのことです。

image00276.jpg
▲Leonardo da Vinci, The Last Supper / L’ultima cena(1494-1497)▲
▲tempera on gesso, pitch and mastic, 880 x 460cm▲
▲Santa Maria delle Grazie▲
▲Milan, Italy▲

画像は中央付近に描かれたイエス・キリストを拡大してみたものです。この作品L’ultima cenaでは一点透視図法が利用されています。拡大してみると、1977年から1999年にかけて行なわれた、この作品の最近の修復にて発見された、一点透視図法の消失点が画面でもはっきりと捉えることが出来ます。イエス・キリストの右の目のこめかみ辺りにある、焦げ茶色の点が消失点です。Leonardoはこの部分に釘を打ち、そこに糸を張って、天井や床などの直線を描いたとされています。

この消失点の画像は、公開された画像を10%拡大しただけです。僅か10%の拡大だけで、ここまではっきりと作品の細部を見て取ることが出来ます。

image00277.jpg
▲Leonardo da Vinci, The Last Supper / L’ultima cena(1494-1497)▲
▲tempera on gesso, pitch and mastic, 880 x 460cm▲
▲Santa Maria delle Grazie▲
▲Milan, Italy▲

試しに消失点を100%まで拡大してみました。ここまで来ると、肉眼で近寄ってみたとしても、こうまで見えないであろう、というところまで見えています。「H9」との文字がうっすらと画面のあちこちに見えているのは、もちろん実際の作品上にあるわけではありません。

私はこれまで何度かMilanoを訪れたことがありますが、まだこのLeonardoのL’ultima cenaは見たことがありません。修復前のL’ultima cena、修復後のL’ultima cenaも図版で見ただけです。したがってここまで細部を細かく見たことはなく、この画像で見られる細部を興味深くながめました。

この画像の撮影には、日本の技術が利用されています。日本の光学機器メーカーであるNikonが撮影機材と技術を提供しています。ニコンのデジタル一眼レフ・カメラD2Xsと、そのレンズAF-S Nikkor 600mm f/4D IF-ED IIが撮影に利用されました。これらの機材を用い、2007年5月7日に1677枚の画像が撮影されています。

HAL9000はL’ultima cenaだけでなく、これまでにGaudenzio Ferrari(ガウデンツィオ・フェッラーリ)のVita di Cristo(キリストの生涯)を8,604,431,000画素で、Andrea Pozzo(アンドレア・ポッツォ)のGloria di Sant’Ignazio(サン・ ティニャーツィオ聖堂)を9,851,873,088画素で公開しています。

HAL9000が取り組んでいるような、高画素数による美術作品の記録は、今後修復や美術史の分野で、新たな研究の可能性を提供するでしょう。

しかしHAL9000の素晴らしいところは、これらの高画素数の画像を、専門家だけに提供するのではなく、インターネットを通じて四六時中無料で公開しているところにあると思います。一般の人たちにも、これまでとはまた違った、美術作品鑑賞の可能性を提示してくれたと思います。

またそれらを可能とした一端として、日本の技術が利用されているのも、日本人としては誇りに思います。

今回この公開されていた画像を見ていて、改めて「本物が見てみたい!」という気持ちが強く湧いてきました。私の住んでいるMünchen(ミュンヘン)から、Milanoまでは地理的には近いので、Münchenに住んでいる間に、ぜひ見に行ってみたいと思います。問題は、距離や時間ではなく、私の場合もっぱら金銭的なものです。そのためには、節約生活を行なわねば。

Similar Posts:

Comments are closed.