あいんかんでぃんすきーふゅあう゛ぁいるはいむ

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▲Wassily Kandinsky, Weilheim-Marienplatz(1909)▲
▲oil on board, 33cm x 44.7cm▲

2007年2月5日、ロンドン(London)のニュー・ボンド・ストリート(New Bond Street)にある、Sotheby’s(サザビーズ)にて、「German and Austrian Art(ドイツとオーストリアの美術)」と名付けられた、オークションが開催されました。そのオークションには、23点の作品が出品され、そのうちの18点が競り落とされます。落札額の総額は、13,768,500 GBPだったそうです。

そのオークションで競り落とされた作品のうち、最も高額だったのが、上掲のものでした。この作品、Wassily Kandinsky(ワシリー・カンディンスキー)による、《Weilheim-Marienplatz(ヴァイルハイム−マリーエン広場)》という、1909年に描かれた絵画作品です。落札額は、2,484,000 GBPでした。

さて、このKandinskyの作品が、オークションにかけられたとことを知り、強い関心を持って、その流れを見守っていた、ひとりの人物がいました。その人の名前は、Florian Lechner(フローリアン・レヒナー)。ドイツ人建築家です。彼は、Annette Kölbl-Rillという建築家と、Weilheim in Oberbayern(ヴァイルハイム・イン・オーバーバイエルン)という南ドイツの小さな街で、KÖLBL-RILL + LECHNER ARCHITEKTEN GbRという建築事務所を構えています。

そう、Lechner氏が建築事務所を構えている、Weilheim in Oberbayernの風景が、Kandinskyの《Weilheim-Marienplatz》には描かれているのです。それでLechner氏はこのオークションの流れに注目していたのです。

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▲Ausführungsplan – Ein Kandinsky für Weilheim▲
▲www.kandinsky-weilheim.deより▲

そのKandinskyの作品を見た、Lechner氏は、あるプロジェクトを思いつきます。それは、《Weilheim-Marienplatz》に描かれた、Weilheim in OberbayernのMarienplatzに、その作品の、巨大複製画を設置するというものです。彼は、Marienplatzにひかれた石畳の一枚一枚に着色を行い、Pixel art(ドット絵)として、《Weilheim-Marienplatz》を再現しようと計画します。

上掲の画像は、そのプロジェクトのための図面です。よく見ていただくと、様々な大きさのpixelに、色がつけられていることが分かると思います。そのpixelは、実際にMarienplatzひかれている、石畳と同じように配置されているのです。白く抜けている部分は、Marienplatzにある噴水や、木の植えられている部分で、そこには敷石がないので、白く抜けているのです。

このプロジェクトについて、私が知ったのは、今年の5月ぐらいのことだったでしょうか。「2100 Quadratmeter Kandinsky(2100㎡のKandinsky)」という記事を、Münchner Merkurという新聞の記事で読んだときのことです。

当時は、Lechner氏が議会でその計画について述べ、反応は上々であったものの、費用の算出の問題、著作権の問題、使用する塗料の問題など、様々な問題が、プロジェクトの実行のために、山積みになっていると読みました。

次に私が、そのプロジェクトが実行されていることを知ったのは、そのプロジェクトについて、その後が気になり、Googleで検索したときのことです。それが、先月初旬のことでした。そして、その検索で、「www.kandinsky-weilheim.de」というサイトを発見したのです。それは、まさに、Lechner氏が計画していたことが、実際に実行に移されたということを意味していたのです。

そのサイトによると、2100㎡の広さを持つMarienplatzに敷き詰められた、8000ほどの敷石を、40色ほどで塗り分け、Pixel artでもって、Kandinskyの《Weilheim-Marienplatz》を、そこに複製画として再現するという、当初の計画通りのものでした。様々な問題が、クリアできたのでしょう。

Lechner氏によるプロジェクトは、2008年7月9日10時、Marienplatzにある1枚の石畳に、最初の色が塗られて開始されました。その後、500名ほどの児童なども参加して、順調に塗られていったMarienplatzの石畳は、2008年7月31日、Lechner氏と副市長により、最後の石畳に色が塗られ、完成となりました。そして、昨日、2008年8月2日、晴れてお披露目となったのです。

その1日後、つまり、今日、仕事が休みだった私は、妻を誘い、そのプロジェクトを見るために、Weilheim in Oberbayernへと行ってきました。Weilheim in Oberbayernは、私の住むMünchen(ミュンヘン)から、Deutsche Bahn(ドイツ鉄道)に乗って、40分ぐらいのところにあります。停車駅でいえば、3つ目の駅。したがって、そう遠いものではありません。

このプロジェクトのことを知って以来、「もし完成したら、絶対見に行こう!」と、思っていた私は、かなり入れ込んでしまっており、そのように近い場所なのに、8時30分ぐらいの電車を選択してしまいました。したがって、Weilheim in Oberbayernに付いたのは、9時を少しすぎたところでした。人口20000人ほどの小さな街で、なおかつ観光地でもないので、日曜日のそのような時間に、そこに降り立ったのは、私たち夫婦ぐらいのものでした。

駅から、Marienplatzまでは、徒歩で10分ほどの道のりなのですが、やはり、ほとんど人通りがありません。また、車もほとんど通っていませんでした。その風景は、以前、私が住んでいたことのある、同じく南ドイツの小さな街の風景を思い出させるものでした。

駅からの道を、どんどん進んでいくと、商店街になっている、歩行者天国に入ります。その歩行者天国に入ると、Marienplatzの西の端が少し見えるのですが、それと同時に、カラフルに彩色された石畳も少し見えます。その様子に、ドキドキしてきます。

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▲Weilheimer Marienplatz▲

さて、そのように、ワクワクしながらたどり着いたMarienplatzですが、私たちが到着したときに、Marienplatzにいたのは、カフェの開店準備をする女性と、そのプロジェクトを眺めていた、老夫婦一組のみという、なんとも拍子抜けの光景でした。Weilheim in Oberbayernが、いくら田舎町だといっても、それなりにメディアで紹介されていたプロジェクトにもかかわらず、なんとも人々の関心の薄いことか。

その事実に、若干ショックを受けたものの、気を取り直して、プロジェクトを眺めることにしました。

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▲Weilheimer Marienplatz▲

まずは、Marienplatzの東の端にもうけられた、高さ8mある、仮設の物見櫓に登ります。巨大すぎて分かりづらいそのプロジェクトも、その高さから俯瞰することで、認識することが可能となります。物見櫓から見た、そのプロジェクトは、確かに、《Weilheim-Marienplatz》の、巨大な複製画になっているのが分かりました。Marienplatzを歩く人々は、まるで絵の中を歩いているかのように見えます。

物見櫓を降りたその後は、私もMarienplatzをうろうろしながら、絵の中を歩いている気分に浸りました。なんだか不思議な気分です。

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▲Weilheimer Marienplatz▲

Marienplatzには、《Weilheim-Marienplatz》で、Kandinskyが描いた風景が、まだそのまま残っています。建物の色が変わったり、木が大きく成長したりしているものの、そこで見られる風景は、Kandinskyが100年ほど前に見た風景と、あまり変わってはいません。「ああ、Kandinskyは、100年前に、ここに立っていたんだなあ。」と、Kandinskyに思いをはせ、しばし、ぼぅっとその風景を眺めてしまいました。

結局、私たち夫婦は、2時間半ほどそこに滞在しました。広場をうろうろしたり、再度物見櫓に登ったり、カフェでくつろいだり。その間、街ゆく人の話題にはなっていたプロジェクトですが、見物人が大勢大挙して押し寄せる、ということはありませんでした。やはり、人々の関心は、それほど高くないということでしょうか。

このプロジェクト、Marienplatzが改装工事に入る、来年の春まで見学することが可能です。物見櫓は、今年の10月頃まで、設置されているとのことです。なかなか不思議な気分を、味わえることの出来るこのプロジェクト、出かけてみられることを、お勧めします。


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▲Weilheimer Marienplatz▲
▲Google マップより▲

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