あかいてん

image00659.jpg
▲『Der Rote Punkt – 赤い点』(2008年公開)▲
▲監督:Marie Miyayama、脚本:Marie Miyayama/Christoph Tomkewitsch▲
▲編集:Marie Miyayama、映像構成:Oliver Sachs、音楽:Helmut Sinz▲
▲出演者:Yuki Inomata/Hans Kremer/Orlando Klausなど▲
▲配給:Movienet(2009年予定)、上映時間:82分▲
▲www.asiafilmfest.deより▲

昨日のエントリーに引き続き、München(ミュンヘン)にて行われていた、Asia Filmfest 2008(2008年10月30日〜2008年11月9日)の話題を。

今回、Asia Filmfestで上映される、『Der Rote Punkt – 赤い点』という作品を、見にいこうと思ったのは、友人であるGさんが、妻と私に、1通のメールをくれたことに始まります。そのメール、ちゃんとは読まなかった(すみません)のですが、この映画に関するお知らせが書かれていたのです。Gさんと関係のある日本人が、監督をしている作品であることが、そこには記されていました。そして、Asia Filmfestで、何か見ようとは思っていたものの、別段、何か見たい作品があったわけではない私たちは、Gさんにお勧めされるままに、出かけたのでした。

『Der Rote Punkt – 赤い点』の上映会場となる、Gloria Palastという映画館へ、上映時間の30分前に到着したとき、まず驚いたのが、その映画の上演を待っているであろう人々の多さです。Mathäserという映画館で、午前中に見た『リンダ リンダ リンダ』では、妻と私を含めて、10人ぐらいの観客しかいませんでした。また、昨年、同じくAsia Filmfestで、映画を見にいったときも、私の見た映画は、その程度の観客だったと思います。したがって、『Der Rote Punkt – 赤い点』でも、それくらいの観客かと思いきや、Gloria Palastの狭いロビーから、あふれんばかりの人、人、人。ざっと見ても、50人は超えていそうな感じです。『リンダ リンダ リンダ』の上映会場では見かけなかった日本人も、大勢いました。私は、この人の多さを見て、すぐに帰りたくなります。しかしながら、チケットも買ってしまっていたことだしと、思いとどまることに。

上映前後にあったイベントや、あとで調べてみて分かったことなのですが、監督である、Marie Miyayamaという方は、日本語では、「宮山麻里枝」と記すらしく、ドイツと、そしてそのなかでも特に、Münchenと深く関係しておられる方だそうです。

Miyayama監督は、1995年に渡独後、Ludwig-Maximilians-Universität München(ルードヴィヒ・マキシミリアン大学ミュンヘン)にて、Theaterwissenschaft(演劇学)を学び、その後、1998年に専攻を変え、Hochschule für Fernsehen und Film München(テレビ・映画大学ミュンヘン)にて引き続き、映画やテレビについて勉強をされ、そして、2008年に卒業されたとのこと。また、ミュンヘン日本語補習授業校や、Ludwig-Maximilians-Universität MünchenにあるJapan-Zentrum(日本センター)などで、長く講師をされているとのことでした。

どおりで、上述のように、上演前から人が溢れているわけです。特に、講師をされていると、人との出会いが多いですからね。「おらが村の〜」ではありませんが、Münchenで上映される、Miyayama監督の作品は、「私たちのMiyayama先生が」といった感じだったのでしょう。観客の多さにも納得です。最終的に観客は、軽く100人を超えていたように思います。

さて、肝心の映画の方ですが、ストーリーは下記の通り。長いのですが、プレス・ノートから、全文を引用します。

これより先には、『Der Rote Punkt – 赤い点』に関する内容が含まれています。

記憶の彼方からこぼれ出たある夢の破片が、東京で学生生活を送る小野寺亜紀の頭から離れない。就職活動にも身が入らず、帰省した実家で、彼女は押し入れの奥にある古い小包を見つける。その中には、封印された記憶を解く手掛かりがあった。古いカメラに残されたフィルムに写っている幸せそうな若い家族。黄ばんだ封筒の中の手紙と外国の地名が並んだ地図のコピー。そこに記された赤い点は、幼い亜紀の人生の分岐点だった。

家族とボーイフレンドの反対を押し切り、亜紀は独り大きなリュックサックを背負って日本を飛び立つ。南ドイツののどかな田園地帯に降り立つと、亜紀は、地図を片手に、赤い点で記された目的地へと向う。道を尋ねるために立ち寄った警察署で、彼女は、オートバイを乗り回し補導された少年エリアス・ウェーバーとその父ヨハネスに出会う。警官に頼まれ、2人は亜紀を目的地まで乗せて行くことになる。何の変哲もない森と野原が広がる地に亜紀を降ろし、家路に着くウェーバー父子。挑発的なエリアスの発言が、家族間の軋みを明白にする。夕食後、姉マティーナと車で街に出たエリアスは、路上で再び亜紀に出会う。宿を探す亜紀に助けを申し出るエリアス。しかし見つけたホテルは満室で、亜紀は結局、ウェーバー家に客として迎えられることになる。

翌日、亜紀はエリアスと共に、地図上の赤い点にあるはずの石碑を探す。そこは、18年前に彼女の家族が交通事故で亡くなった場所だった。静かな森の中で、片言のドイツ語で言葉を交わしながら、2人は互いの距離を縮めて行く。
一方、息子の行動に不満を持つヨハネスは、帰宅したエリアスと口論の末、彼に平手打ちを食わす。呪いの言葉を吐いて家を飛び出すエリアス。亜紀は、突然目前で巻き起こった嵐を前に、為す術もなく立ち尽くす。

亜紀の出現により、ウェーバー家の抱える葛藤が沸点に達し、その裏に隠された過去の事実が図らずも明らかになっていく。そして彼女が、事故現場にある石碑を見つけた時、その場所は、ウェーバー家の秘密とも深く関わりながら、それぞれの再生の場へと姿を変えていく。

Presseheft – Japanischより(※PDF書類です※)

上に引用したストーリーは、恐らく、Miyayama監督、ご本人が書かれたものかと思いますが、良くできているもので、この通りの映画です。

映画を見た感想としては、「自分(のアイデンティティー)探し」とか「死(もしくは過去)と向き合う」とか、そのようなものを思い浮かべたのですが、Miyayama監督の意図は、果たしてどうだったのでしょうか。

日本語の新聞などを読んで、その内容が正しく理解できる人であるならば、上記引用のストーリーを読んだ際、かなりの人が、この映画の中で、主人公の小野寺亜紀(猪俣ユキ)とウェーバー家の人々が、その「赤い点(ドイツ語でDer rote Punkt)」を中心にして、どういう風に関わっていくのかが、すぐに分かったかと思われます。

私は、上記引用のストーリーなど、特にこの映画に関する知識を持たずに見ましたが、それでも、かなり早い段階で、結末というか、小野寺亜紀とウェーバー家の人々との関係が見えてしまいました。私と、同様の経験をした人も、この映画を見られた人の中には、多いのではないでしょうか。

ということで、Miyayama監督も、そのことについては、あえて意識的に、話があらかじめ分かるようにしてあるのだと思います。そして、そのことをほのめかしつつも、あることを、共通の体験(歴史)としてもつ人々が、いかにしてそれと向き合っていくのかというのが、この映画では見せ場となっていて、描写されているのでしょう。

がしかし、私が『Der Rote Punkt – 赤い点』を実際に見た感想としては、そうではなかったように思います。

言葉が通じないことによる、小野寺亜紀とウェーバー家の人々の間に存在するもどかしさは、心のコミュニケーションで解決されるでもなく、もどかしさのまま、映画は終わってしまったように思いましたし。そのことに限らず、ストーリーの展開や、表現の部分に於いて、この「もどかしさ」というのを、この映画を見ていて、ずっと感じていました。

この映画、『Der Rote Punkt – 赤い点』は、事実を元にして作られた話だということで、元になる話の方が存在するのでしょうし、そのことを考えると遠慮をして、思い切って、話を膨らませにくかったのでしょうかね。それとも、「もどかしさ」自体が、この映画のテーマだったのでしょうか。

ただ、ストーリーや、表現といった部分を省いた、映像という面では、見るべき所が多々あったように思われます。画面に映し出される映像は、Miyayama監督が、Wim Wenders(ヴィム・ヴェンダース)氏を好きだと仰有っているのが、よく分かるものです。

そういった面から、製作や脚本は外部に任せ、Miyayama監督が、映画監督の本来の仕事である、映像作成に注力した作品を、1度見てみたいと、映画を見て思いました。

などと、『Der Rote Punkt – 赤い点』を見た感想を記したので、つまらない映画であったと思われたかもしれませんが、これは、映画など素人な私の感想ですから、全く当てになりません。事実、私の感想とは裏腹に、むしろ、この映画は、高評価を受けているのです。

例えば、この『Der Rote Punkt – 赤い点』、Bayerischen Rundfunk(バイエルン放送局)、HypoVereinsbank(ヒュポフェラインス銀行)、Bavaria Film(バヴァリア・フィルム)が共同で与えている、Förderpreis Deutscher Film(ドイツ映画奨励賞)という賞を、Ensembleleistung von Kamera, Musik und Schnitt(カメラ・音楽・編集のアンサンブルの成果)という部門で、今年受賞しています。この部門での賞は、これまでになかっただけに、よほど、この映画のその部門の出来が、良かったということだと思われます。

また、『Der Rote Punkt – 赤い点』は、Asia Filmfestだけでなく、Montreal World Film Festival(モントリオール世界映画祭)、Internationale Hofer Filmtage(ホーフ国際映画祭)、Cairo International Film Festival(カイロ国際映画祭)、International Film Festival of India(インド国際映画祭)など、ドイツ国内外の映画祭で、上映されたり、上映が決まっていたりするなど、高く期待され、評価されている作品なのです。

私の『Der Rote Punkt – 赤い点』を見た感想が、いかに正しくない見方によるものだったということが、お分かりいただけましたでしょうか。

さて、話題は、映画の内容と、直接関係ない話になってしまうのですが、『Der Rote Punkt – 赤い点』は、Miyayama監督が通っていた大学での、卒業制作として作られた映画であるというのには、一番驚かされてしまいました。

『Der Rote Punkt – 赤い点』は、私には、いまいちピンと来ない作品ではあったものの、それが、一学生の作成した、卒業制作の映画だと考えると、それはそれで、すごいものであると感じます。てっきり、ある程度経験や実績のある方の作品だと思い、映画を見ていたので、プロの映画監督の作品を見るように、批評してしまいましたが、学生の卒業制作としては、この『Der Rote Punkt – 赤い点』、文句の付け所も少ない作品でしょう。

特に、この映画の製作に、スポンサーとして関わった企業の多さや、助成金の多さは、一学生の作る映画とは思えないほどのもので、感心していました。Hochschule für Fernsehen und Film Münchenでは、映画やテレビに関する、理論や技術以外に、こういったスポンサーを獲得するための、ノウハウのようなものも、学べるのでしょうかね。だとしたら、それは、とても良いことだと思います。

映画やテレビに限らず、絵画や音楽など、芸術全般に関していえることだと思いますが、製作はお金のかかることです。したがって、食べていくためには、自分や自分の作品をプレゼンテーションして、お金をもらう技術も、知らなければなりません。いくら、すばらしい才能を持った人でも、見つけられなければ、その才能は埋もれたままですし。製作だけを行って、自分や作品を売り込むこともせずに、見つけ出される才能というのは、ごくごくわずかでしょう。そのような、夢のような物語を期待していても、食べていけないのが、芸術に関わる人の現実だと思います。

ということで、作品の製作に、資金を提供してくれる、スポンサーを探す能力というのは、芸術家にとって、作品を作り出す能力と同様、必要なものではないでしょうか。したがって、学校でも、そういうことを教えるべきだと、私は思っていました。

ただ、教わったとしても、それが実践できるかどうかは、また別の話です。ということで、Miyayama監督は、映画作りの才能だけでなく、こういった製作に関わる、現実的なことについても、高い能力を持っているということがよく分かりました。

Miyayama監督の名前は、今回の『Der Rote Punkt – 赤い点』という映画で初めて知りましたが、ドイツに住んでいれば(願わくば日本に住んでいても)、恐らく今後も、その名前や作品を、耳に(眼に)する機会があるでしょうし、注目しておきたいと思います。なんていったって、「おらが町のMiyayama監督」(日本人というのもあるし、München関係者というのもあるし、自宅から徒歩数分のところにある、Hochschule für Fernsehen und Film Münchenの出身者というのもある)ですから。

『Der Rote Punkt – 赤い点』は、来年の夏頃、ドイツの映画館でも、一般上映される予定(配給:Movienet)だとのことです。今回の上映を見逃された方、もうしばらくお待ちください。


大きな地図で見る
▲Gloria Palast▲
▲Google マップより▲

Similar Posts:

Comments are closed.